体験レビュー 原付二種だから見える景色|ゆっくり走る旅の魅力
はじめにバイク旅の楽しみ方は、人それぞれです。高速道路を使って遠くまで一気に走る。大型バイクで長距離をかっ飛ばす。目的地に早く着くことに達成感を感じる——そういう旅にも、確かな魅力があります。でも私が原付二種(125cc)で走り始めてから気づいたのは、旅の楽しみ方はそれだけじゃないということでした。速く走らなくていい。遠くまで行かなくていい。目的地すら決めなくていい。ただ、気の向くままに走り出して、気になった景色があれば止まって、知らない道があれば入ってみる——そんな旅が、こんなに豊かなものだとは思っていませんでした。原付二種だからこそ見える景色があります。ゆっくり走るからこそ出会える瞬間があります。今回はそんな、125ccならではの旅の魅力についてお伝えします。目的地だけが旅じゃない車で移動しているとき、無意識に「あと何分で着く」を考えていませんか?ナビが示すルートから外れることへの抵抗感。寄り道すると時間が読めなくなる焦り。目的地に着くことが最優先になって、途中の景色は「早く通り過ぎるべきもの」になってしまう。原付二種で走り始めると、その感覚がガラッと変わりました。「あの道、なんか気になるな」→ そのまま曲がってみる。「あそこに神社があるな」→ 止まって階段を上ってみる。「この川沿いの道、気持ちよさそう」→ 予定を変えて走ってみる。125ccという速度域で走っていると、景色がちゃんと「見える」んです。車やもっと速いバイクだと一瞬で通り過ぎてしまうものが、原付二種のペースだとちゃんと目に入ってくる。旅の価値が、目的地に着くことだけじゃなくなる——これが、125ccツーリングの一番の魅力だと感じています。ゆっくり走るから、見えてくるもの原付二種ツーリングの醍醐味は、スピードではありません。周りの景色を全身で感じながら走れることです。春には山の稜線が薄緑に染まり始める。夏は川沿いの道で水の音が聞こえてくる。秋は山肌が赤や黄色に変わっていく。冬は空気が澄んで、遠くの山まではっきり見える。同じ道を走っても、季節によって表情がまったく違う。それに気づけるようになったのは、125ccでゆっくり走り始めてからです。そしてもう一つ。原付二種は気軽に止まれます。大型バイクや車だと「止まる場所を探して」「Uターンして」という手間がかかりますが、125ccなら路肩のちょっとしたスペースにさっと止められる。「あ、いい景色」と思った瞬間に止まれる気軽さが、小さな発見を積み重ねてくれます。高速道路を使えないからこそ、見える景色がある原付二種(125cc)は、高速道路・自動車専用道路を走ることができません。最初はこれをデメリットだと思っていました。でも実際に走り続けてみると、これが逆に良かったと感じるようになりました。高速道路を走っていると、景色は均一です。防音壁が続いて、サービスエリア以外では止まれない。「移動している」という感覚はあっても、「旅をしている」という感覚は薄い。一方、一般道を走る原付二種ツーリングは違います。地域ごとに変わる町並みの雰囲気地元の人しか通らないような細い農道国道沿いにぽつんとある年季の入った食堂案内板もないような小さな滝や展望台「こんな場所があったのか」という発見が、一般道には詰まっています。制限があるからこそ、地域の道を丁寧に走ることになる——高速道路が使えないことは、デメリットではなく「一般道を楽しむための理由」になっています。群馬の道を、125ccで走る楽しみ地元・群馬には、原付二種ツーリングにぴったりの道がたくさんあります。山に向かう道を走ると、標高が上がるにつれて空気が変わってくるのが分かります。川沿いの道は、水の音を聞きながらのんびり走れる。農村地帯の真っ直ぐな道は、視界が開けて気持ちいい。群馬は関越道・上信越道などで「通過する県」になりがちですが、一般道を125ccで走ると「こんなにいい道があったのか」という発見が多いです。同じ場所でも、朝と夕方では光の入り方が違う。春と秋では山の色が違う。季節と時間帯を変えながら、何度でも走りたくなる道が近所にあることに気づきました。遠くへ行かなくていい。地元をゆっくり走るだけで、十分な旅になります。経済的だから、無理なく続けられる趣味を長く続けるためには、経済的な負担が少ないことも大切です。125ccクラスのバイクは燃費が良く、車種や走り方にもよりますが1リットルあたり40〜60km前後走れるモデルが多い。日帰りで150〜200km走っても、ガソリン代は500〜700円程度で済むことも珍しくありません。維持費の面でも、125cc以下は車検が不要、任意保険も割安、タイヤなどの消耗品コストも大型バイクと比べてかなり低め。「趣味にかけるお金はほどほどにしたい」という60歳からの感覚にも合っています。無理なく続けられること——それも、原付二種を選んだ大きな理由のひとつです。60歳からのバイク旅、大切にしていること60歳からバイクに乗るうえで、自分なりのルールを決めています。疲れたら無理せず休む(こまめな休憩を惜しまない)天候が怪しい日は乗らない(無理して出発しない)安全装備はきちんと揃える(ヘルメット・グローブ・プロテクター)速さを競わない(後ろから来る車に焦らない)距離より内容(100km走るより、10kmの道を丁寧に楽しむ)若い頃は「もっと遠くへ、もっと速く」と思っていたかもしれません。でも今は、「今日の道を、今日の自分のペースで楽しむ」それだけでいい。おわりに原付二種だから行ける場所があります。原付二種だから見える景色があります。原付二種だから出会える瞬間があります。ゆっくり走ることで、今まで気づかなかった地元の魅力に出会えた。60歳になって、そのことをようやく知りました。速さを求めない旅、遠さを求めない旅。でもその分、道中に小さな発見と豊かさが詰まっている。125ccの小さなバイクで走る旅は、人生をアップデートする、ひとつの立派な方法だと思っています。